著作権による資金調達と価値評価

 資金調達を目的とする著作権の価値評価もあります。著作権の経済的価値が適正に評価されるのであれば、その価額に相当する資金の提供を受けることも可能なはずです。ところが、著作権による資金調達は普及しているとは言えません。その理由は、アメリカなどに比べて、社会的インフラが未整備だからです。

 著作権の活用による資金調達がわが国で普及しない理由はいくつか指摘されています。中でも(1)著作権の担保価値の評価手法が広く認知されていないこと、(2)株式や不動産のような取引市場が存在しないこと、(3)資金提供を行う側に著作権の価値を見極める「目利き機能」が確立されていないことが大きな要因とされています。その他にも、法的リスク、事業的リスクなどによる減価のリスクが高く、著作権の価値が変化しやすいという指摘もあります。要するに、著作権の価値評価をしたり、換金したりする制度が未整備であるということです。

 それでも、著作権に基づく資金調達の事例がないわけではありません。かつては、「知財=独占」というイメージが先行し、知財は「自社で使うもの」とされていました。そのため、知財に関する情報は非公開とするのが原則でした。著作権についても、第三者への利用許諾や譲渡、著作権に基づく資金調達は例外的な活用方法であるとの偏向があったように思います。しかし、いまではクローズド戦略またはクローズドイノベーションだけでは通用しないと認識されるようになりました。「見えない資産」、「隠れた資産」などと言われた知財の価値を「見える化」し、投資の回収または資金化のために活用することは企業の経営課題となっています。

 著作権に基づく資金調達の事例を検討してみると、価値評価手法のブラッシュアップ、「目利き機能」の確立のほか、非財務情報である著作権を評価するための情報を適正に開示する方法が求められていることがわかります。「知的資産経営報告書」や「経営デザインシート」による非財務情報の開示が試みられていますが、これらの場合、結局のところ相手方(資金提供側)に価値評価(価額の算定)を委ねてしまうことになります。資金調達を目的とするならば、著作権の価値(価額)を明らかにし、その根拠を示すべきです。そして、それは検証可能でなければなりません。著作権の価値評価が広く実践されると、資金調達の方法に「著作権の活用」という選択肢が加わることになるのではないでしょうか。

(Blau=Baum)