著作権譲渡の取引価額は、当事者の力関係や利害関係が影響し、公正・適正な価額でないことが多いようです。実際、契約実務の場面では、「著作権の一切を譲渡する(27条・28条を含む)」とし、著作者人格権の不行使特約を設け、著作権の客体(著作物)の移転に伴う取引価額に著作財産権の価額が含まれているかのような内容の契約が存在します。これでは、著作権の価値は無いものとして、常に力関係の強い側が自己に都合の良い取引価額を押し通すことができます。公正な取引のためには、第三者による客観的かつ適正な著作権の価値評価が必要です。
価値評価の仕方(評価手法の選定)は、著作権が利用されているのかまたは未利用なのか、利用する予定があるのかまたはないのか、ライセンスしているのかなど、様々な場面、局面を見極めたうえで行われます。そのため、価値評価の目的、前提条件、評価方法、検討に使用する資料などが異なれば、それらに応じて評価も異なるものとなりえます。つまり、価値評価は誰がやっても常に同じ結果が導き出されるわけではないということです。ただし、価値評価は後日の検証が可能なものでなくてはなりません。
ところで、著作権の移転を目的とする価値評価は、「譲渡の意思決定のため」または「譲渡価格の算定のため」という目的に分けられます。前者は、譲渡をするかしないかの検討を行うための価値評価(定性評価)で、後者は、譲渡価格を算定するための価値評価(定量評価)です。定性評価は対象著作権のビジネスへの寄与度の判定に用いられ、定量評価は値段を決めるために用いられます。なお、定量評価によって算定された評価額は、取引価格を決定するものではなく、評価の依頼者が価格交渉を行う際の参考情報とするためのものです。
いずれにせよ、著作権を譲渡する際に、公正・適正な参考情報のないまま取引交渉を行うのは避けたいところです。著作権の譲渡を目的とする価値評価は、市場における交換価値を評価することです。著作権の資産的価値は適正に評価されることで、著作権の取引・流通は進展し、有効活用が可能となります。
(Blau=Baum)
