著作権のライセンスを目的とする価値評価

 著作権のライセンスとは、権利者以外に著作権の利用を契約により許諾することです。多くの場合、ライセンサーとライセンシーそれぞれの目的は相違し、利害関係も対立します。また、ライセンス料は当事者の力関係で決まることが多いのが実態です。当事者双方が納得できる取引とするためには、著作権の価値評価による適正・公正なライセンス料の算定が必要です。

 ライセンス料の算定は、(1)売上高に対する比率により決める場合、(2)著作権を活用して生み出す利益に基づいて算定される場合があります。売上高に基づくライセンス料(ロイヤリティ)の支払い方式は、1.ランニングロイヤリティ、2.ミニマムロイヤリティ、3.ランサムペイメント、4.イニシャルペイメントに分けられます。ただし、本来ライセンス料は著作権の価値によって算定されるべきという考え方もあります。つまり、ライセンス料は売上高ではなく、著作権を活用して生み出す利益に基づいて算定される方が望ましいという考え方です。適正・公正なライセンス料は、将来得られる利益をライセンサーとライセンシーがどのように分配するのかといった考え方に基づいて算定されるべきであるということです。

 ところで、価値評価に影響を及ぼし得るものとして、他の知的財産権法にはない著作権特有の問題があります。そのひとつに、ライセンシーの対抗の問題があります。ライセンサーが第三者に著作権を譲渡し、新たな著作権者(譲受人)がライセンシーに差止請求をしたときには、ライセンシーはその新たな著作権者に対抗するのは困難です(*1)。また、海賊版サイトやリーチサイトなどのように著作権の価値を著しく損なう可能性のある行為に対して対策が施されているかどうかも、著作権の価値評価では検証の対象となりえます(*2)。その他にも、共有著作権や二次的著作物であると、著作物の利用が難しくなるリスクが想定され、この場合もやはり価値評価に影響します。

 ライセンサーは、著作物の創作または権利の取得に要した費用など、投資に見合う価額をライセンス料から回収したいと考えます。一方、ライセンシーはコスト、侵害リスクなどを考慮します。ライセンスを目的とした価値評価とは、これらの事情を総合的かつ客観的に評価し、適正・公正なライセンス料を算定することです。要するに、当事者の力関係だけでライセンス料の決定がされることのないよう、ライセンサーとライセンシーのバランスをとることが重要なのです。

(*1)2019年に公開された文化庁の資料によれば、近い将来、「当然対抗制度」が導入されるものと予想されます。

(*2)2019年、「侵害コンテンツのダウンロード違法化」、「リーチサイト対策」の法改正が検討されています。

(Blau=Baum)